区立D小学校界隈 ちいちゃん日曜学校に行く

ちいちゃんは、D小学校の上級生になった。お父さんが、新しもの好きで、知り合いの電気屋さんが、ブラウン管や真空管を集めて組み立てた手作りの木の枠にはめ込まれた白黒テレビが、ちいちゃん家(ち)にはあった。「パパは何でも知っている」「うちのママは世界一」「名犬ラッシー」がちいちゃんの好きなドラマ。ドラマの中のお父さんとお母さん、町の大人達もみんな子供の話を聞いてくれ優しい。ちいちゃんのお母さんは、「これをしなさい」「それは、ダメ」と言う事を聞かないと怒る。近所の大人達も「それしちゃだめ」「なにしてるの」と声をかけて来る。そして、いつの間にか、お母さんの耳に入って、「〇〇の小母さんから聞いたけど、何やったの」といきなり怒られる。怒られる理由は、冬なのにタイツを履いていなかったとか、道で買い食いをしていたとか,...。ちいちゃんは悪い事をしたと思っていないから、話を聞いて欲しかったけど、お母さんには通じない。かえって怒らせてしまう。だから、外国のお母さんは優しいんだと思いながら黙って怒られている。
ちいちゃんは、ドラマに憧れた。大人が皆優しく話を聞いてくれる事や、大きな冷蔵庫の中から牛乳を取って飲んだり、バスケットから買ってきた果物や卵パック、パンを冷蔵庫に入れるのをやってみたいと思い、家族そろって日曜日に協会へ行くシーンに協会の中に入って見たいと想像した。そんな時、クラスのM子ちゃんが、S協会の日曜学校の事を話してくれた。日曜日の朝、ミサの時間に行けば誰れでも入れて、ミサの後、数人のグループで聖書の勉強をする。ちいちゃんは、宗教とか信仰とか興味は無かったけど、協会の中に入れると聞いて、連れてって行ってもらう事にした。「来るんだったら10円持って来てね。」と言われた。
日曜日、M子ちゃんと待ち合わせて協会へ。
ちいちゃんの家から協会へは、旧街道を品川に向かい私鉄の踏切を渡り、山手線や東海道線、貨物線のレールが何本も走る上に渡された鉄橋を渡って五反田駅に続く道を少し歩くと、協会の入り口に着く。屋根に十字架が立ち、白い壁に両開きの玄関のドアと木の枠の窓がある建物があった。外国ドラマの風景に興味深々でドアを開け入ると、正面の壁に木の大きな十字架が飾られ、天井は高く屋根の形のままで、映画で見たキリスト像やマリア像などは無く、広間になっていた。5~6人が座れる木のベンチが20個ぐらい、3列に並べてあった。何処に座っても良いと言われて、M子ちゃんと真ん中のベンチに座った。
背広を着た神父さんが、季節の話とか、協会の行事予定を話し、最後に神様に感謝しましょうと賛美歌を唄った。唄っている時にツボ(スイカ位の大きさ)が、前の列から座っている人に渡されて受け取った人が、そのツボにお金を入れて次の人に渡す。M子ちゃんが先に受取り、ツボに10円玉を落とした。カチャと音がして、ちいちゃんの処へツボが来た。ちいちゃんもM子ちゃんをまねて、ツボに手を入れて10円玉をカチャ落とした。